連載コラム

「ー日本の人たちが、どんどん日本向けに海外の様子を知らせてあげる必要があるー」

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2023.02.17 

 この数十年カナダ、アメリカ、台湾と日本をぐるぐる回っていて、気が付いたことがあった。

 「音」に対する反応の違いだ。びっくりするのは日本の女の子たちの声。

 アメリカ、カナダそして台湾でも日本で聞く彼女たちの声を比べてみると、がぜん日本での声はうんと小さくなって静かになる。

 レストランでも喫茶店でも日本はとても静かだ。ところがカナダ、アメリカ、台湾ではもうにぎやかでどこも生き生きとしている。その中で日本の女性たちの表情も声も明るい。

 ふと思い出すのは彼が幼い時から30年以上も付き合いがある、ある男の子の事である。

 ある時彼はお天気が良かったのでひげを伸ばしたまま外へ出た。彼はネットオタクか?とにかくほとんど家にこもって仕事をしていた。

 そんな彼がお天気につられて気分良く外の散歩へ出た。鼻歌、歌いながらルンルン気分で道を歩いていたのだ。いきなりパトカーが来て3~4人のおまわりさんが彼を取り押さえたのだ。いきなりの事でびっくりした彼は大声を出して抵抗した。

 其のまま、さるぐつわをかまされ精神病院へ。そして押さえつけられ、注射された。それから家族への連絡があった。数日して退院出来て私の診療所へ来られたのだ。

「何なの?どうしていきなり捕まえることが出来るの?」私もびっくりして聞いてしまった。

 どうも近所の人が「ひげもじゃの男が大きな声を出して道にいる!」と通報したらしい。

 そういえば私も経験がある。ある時バスへ乗ったらある知り合いにぱったり出会った。彼女も私もびっくりして両方で「お久しぶり!」と声を出してしまった。

 いきなり乗客から「うるさい!。声を出すな!」と怒鳴られてしまったのだ。私たちは肩をすくめて黙ってしまった。

 今から30数年前だろうか?海外から日本へ留学に来られる人々は多い。

 国立市には国立の一ツ橋大学が有る。そんな学生も当然診察に私の医院へ来てくださる。留学生たちの中で学生でありながら、小さな薬メーカーを買収したという学生さん達がいた。一人二人でない。

 そして彼らのある一人の話である。

 「日本の人は難しいですね。理解しにくいです。会議を開いても社員はみんな黙ったまま。お葬式の様です。自分の意見が全く出てこないです。僕の国では社員はみんなよくしゃべります。自分の給料に関係するのですよ。其れなのに日本は他人にまかせっきりで、給料もらうだけと考えている。自分で奴隷化しているのです。」と言っていた。

 私は、日本はブラックホールみたいだと思う時が有る。日本にはなんでもある。特に出版界の素晴らしさは類を見ない。

 ドナルド・キーン博士がかつて「世界を知りたければ日本語を学習しなさい」と言っていた。

 でも水村美苗先生は「滅びゆく日本語」と書いておられる。国語の小中学校の先生方は子ども達の国語力の低下を嘆いておられた。

 私は皆さんには、「日記」と「お小遣い」「家計簿」を付ける様にお勧めしていた。

 ペンをもって字を書くことは大脳の発達にはとても大切だと言われている。

 ともあれ日本は世界中のモノを飲み込んでしまうブラックホールだと感じる。あるいは「パンドラのツボ」に残った「希望」がある場所という気もするのだ。

 海外から成田や羽田に帰ってきた時の「ホッとする気分」静かで色彩も華やかでないけど、ひと時の安堵感が湧き出る。「日本は落ち着くなあ」と思うのだ。

 だから人々は自然に話し声を低く小さくして周囲の雰囲気に合わそうとするのかもしれない。

 それにしてもいきなり取り押さえられた彼の経験は考えさせられた。一般の市民が見慣れないモノに恐怖心を抱いたのかもしれない。

 世界中で活躍している日本の人たちがもっとどんどん日本向けに海外の様子を知らせてあげると、世界の中での日本の立ち位置を皆さんは知ることが出来るのでないか?