2024.07.01
書籍類の整理で木村秋則著『奇跡のリンゴ』が出てきた。
懐かしい限りだ。出版されてすぐ購入した本である。
その頃は私は確かもう富士見台医院を離れて
東診療所だけになっていた。「ネオニコチノイド」という
農薬について学習中で岩澤信夫氏の講演会にも行って
「不耕起米」についても学んでいた。
私が「食毒」という言葉を知ったのはそのずーっと前の事だ。
1970年3月、29歳で開院したが、小児科で漢方薬エキス散で
治療するなんて日本で初めてと叩かれ、周辺の病院の先生方にも
不思議がられていた。
その内、子ども達のひどいアトピー性皮膚炎の病人達が集まり、
いくら必死に手当てを探っていても追いつかない。
自分が撮った写真集をもって中国大陸へ向かった。
北京から始まり、南京市の国立皮膚疾患研究所を訪ね、
そこでも「分からない」と医師達の連発だった。
最後、上海にある国立中医薬学大学の付属病院、
龍華医院の皮膚科の医師に出会った。
その女医さんはしげしげと写真を見てくれ、
「これは食毒と思いますが、日本の子ども達は、
何を食べているんでしょう?」と言われたのだ。
それから日本へ戻って私なりに食事指導はしていたが
分かったのだ。
当時はアトピーに限らず皮膚疾患には
ステロイド入りの外用薬がよく使われていた。
その弊害にもいろいろ出会っていた私だったので、
症状消しでは治療にならないと思いステロイド剤は
使ってなかった。患者が医療者の所へ通う
必要がなくなるのが大切なのだ。
ふとしたことで「日本の伝統食」を教えてくれるという
小さい医学会を知り、すぐ学習を始めた。
同時進行でサプリメントについて学習を始め、
栄養学も講義を受けることになった。
日本の伝統食の学習をそれぞれのご家族にお願いした。
見事にアトピーだけでなく、子ども達は病気そのものに
めったにならなくなった。
実は日本の人ばかりでない。もちろん日本にいる
ガイジンと言われる子ども達やアメリカのカルフォルニアで
出会った酷い皮膚炎の女性に、日本の伝統食や
漢方薬の処方で見事に収めた経験もしていた。
つまり「体内の解毒」が基本なのだ。
食養生だけで、ほとんどの子どもの皮膚疾患は
良くなっていくので、「新興宗教の教祖」とまで
言われていたらしい。
そこに到るのには、開業以来30~35年はかかった。
自分には手に負えなく大病院へ送る病人はいたので、
私の医療レベルは低いと自認していた。
それが日本の伝統的な統合医療で楽に治療できるのだ。
日本の医療文化は本当にすごいと思う。
人体向けの医薬品、農業や牧畜に使われる医薬品だけでない。
身の回りのあらゆる「生命毒」の働きがあるものは
それらも回りまわって体内に入ると人にとっても毒になるのだ。
もちろん毒は人工的に合成されたものだけでない。
大昔から地球上にはたくさんの天然毒がある。
「毒物史」を研究する学者さん達もいるのだ。
そして「食毒」とは、物質そのものが「毒」でなくても、
たくさん体内にたまると、代謝されず、
人の身体にとっては毒になると知った。
人類は昔は食べ物を手に入れるのが大変で、
ほとんどの人々は食糧不足だったそうだ。
それで「食糧不足」には耐えられるが、過食などの
「過量食物」には消化代謝が間に合わず、体内で蓄積するという。
今はもっと時間が経過しているので、
毒の種類と総合量はもっと増えている可能性がある。
木村秋則氏の『奇跡のリンゴ』を英語に翻訳したという
オノ・ヨーコさんの話も面白いが、日本の人々はアイディアマンだ。