TORJA「漢方内科医の手当て」

『TORJA』2026年3月号掲載「漢方内科医の手当て」~窒息の恐ろしさ…経験する必要はない。~

この記事は約2分で読めます。

 日本で一昨年2月、子どもが学校給食で出たウズラの卵を喉に詰まらせ窒息死するという事故がありました。昔から窒息は恐れられ注意されています。たとえば有名な華岡青洲先生は本の中で「お客さんにお餅を差し上げる時、大根おろしを一緒に添えないのは大変失礼である」と書いています。

 ところで私はドジと言われるくらいによく失敗します。15歳の時、私は京都に住む姉の所に居候しました。貧乏であまり食べる物がないので、つい佃煮をおかずにしていました。その日は大好きな山椒の実の佃煮をおかずに食べていたのですが、急に喉が詰まり苦しくてじたばたしてしまったのです。「水物を飲もう!」と私はお茶代わりに飲んでいた白湯を喉へ流し込んだのです。ありがたいことに少しずつ山椒の味が薄まったのか、ご飯などが喉の奥へ流れてくれて息が出来るようになりました。この時は喉の粘膜が佃煮の濃い味の刺激で腫れあがり、管が狭くなったのです。

 先のお餅と大根おろしの話は多分お餅の粘りを固めて喉の粘膜にくっつきにくくするのだと思います。2025年春の経験。私はお餅が大好きですが、家族には気を付けてと言われます。でも自分で食べたいといつも台所に立つのです。「お餅は怖い」と知っているのでスーパーの切り餅を柔らかくして、さらに細長く切って海苔で巻き、それを切って0.5センチ大のサイコロ状にして、ゆっくり食べていたのです。海苔巻き餅はおいしいですし、ゆっくり食べるので切り餅1個分で充分満足します。

 ところが最後の1個を口に入れて飲み込もうとしたとき、急に呼吸が出来なくなりました。「窒息する!!」家には誰もいないし声すら出せない。とっさに目の前にあった玄米黒酢のビンをつかまえると原液のまま口の中へ注ぎ込んだのです。突然吐き出されたのは、十数cmも数珠つなぎになった海苔のないお餅でした。なんとか呼吸できるようになり、また死に損なった私だと感激しました。

 私の嚥下能力の低下で海苔は溶けて先に胃袋へ流れたのでしょう。お餅だけがまだ胃袋へ落ちない内に私が次々口に入れていたのです。玄米黒酢を原液で注ぎ込んだことで、喉の粘膜がびっくりして蠕動運動が逆になったのでないかと考えました。

 それにしてもお酢様様です。私は皮膚のトラブルでずいぶん自然酢にお世話になったので、薬として考えるようにしています。窒息だけは本当に苦しいので、皆さんには経験してほしくないです。