連載コラム

「-車輪の下の生命。-」

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2025.09.01

 薬草の中で、「車前草」(オオバコ)がある。
名前のとおり車にひかれても平気で
アメリカ、カナダでも日本でもその生命力は強い。
芝生の中ではタンポポと違って目立たないが
確実に勢力は伸ばしている。

 私にしたら野草は宝の山だ。
日本にいるときから、私は野草をちょくちょく利用した。
ドクダミだって食べるし、生きていられれば何とかなる。

 野草はおいしくなくても、なんでも調理次第だ。
元々たくさん食べるようなものでないけど精が付く気がする。
野草は人間に可愛がられない分、生命力は強いのだ。
その上に車前草は車にひかれても
平気というほどしぶとく生き残る。

 栽培野菜の弱弱しさに比べて、
野草類のなんとたくましいことか!
人だって同じで、恵まれ過ぎると虚弱になる。
便利すぎると身体は萎えてしまう。

 私は若いお母さん達に、「子どもとお散歩に出たら
一緒に街中の野草の見学をしてください」
「子どもと植物図鑑をめくってください」とお願いしてきた。

 子ども達に幼いうちに自然とのかかわりを作ってあげると、
成長過程にとても良い結果を出す。

 人は元々自然の一部で、自然から離れるほどに
不健康になり、精神を病む。

 勉強ばかりしていたある男の子、目標の
T大学に入学して一か月して自死してしまった。
学歴職歴は生きる力と全く関係ない。
大学入学ですぐ自死した男の子の知らせを聞いた時、
私はヘルマン・ヘッセの「車輪の下」を思い出したものだ。

 考えてみたら日本で沢山の犠牲者になった若者達に出会って来た。
私達大人はもっと人生の後輩と
会話をしたほうが良かったのでないか?
私自身が上手くできず、今、反省することが多いだけに、
子孫には申し訳なさで毎日が償いの日々である。

 野草のように生き延びる力、それでも除草剤には負けてしまう。
人はいずれその除草剤などの化学薬品で
自分自身がやられてしまうと知ったほうがいい。

 人の「野生化」が少しあってもいい気がする。