TORJA「漢方内科医の手当て」

「『TORJA』2024年9月号掲載「漢方内科医の手当て」~風邪の繰り返しと喘息に~」

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 喘息の経験がある人は、その苦しさはとても辛いものと分かります。東洋医学や漢方医学では、「肺」は内臓の肺だけでなく、その働きをも含めた全身的なものとして考えています。東洋医学、漢方の考え方はとても古いので、「それは医学でないし、科学とは言わない」と考えるお医者さんもいますが、私は実利的な人で「病人が普通に生活出来ればどんな手当てでもよい」と考えているのです。

 私は物心つく頃より病気の問屋と言われるくらいに「病床」に在ったのでその苦しさを知っていますが、病気を経験しないことには元気でいられることの有り難さはわからないでしょう。私が母の家庭内での色々な手当てで無事生きてこれましたが、それでも医科大学で西洋医学教育の考え方を学んだ後は、漢方薬を実際に病人の治療に使うというのはまだ思い付きもしませんでした。

 きっかけは長男の小児喘息の治療でした。発作がひどく自分が働いていた病院に入院させても発作は治まりません。院長が担当してくれていましたが、「ステロイド治療しかないね」と言われました。でも私はさんざんそんな子どもたちの様子を見ていましたので、お断りのため退院させ、すぐ鍼灸師で漢方にも詳しい先生が同じ病院へ来ていましたので往診を頼みました。

 先生は息子を診て「麦門冬湯」ですよと言われ、私はすぐ病院へ行って薬をもらい息子に飲ませました。その時の感激は今でも忘れることが出来ません。息苦しくて喘いでいた10か月頃の息子がすやすやと眠りに入ったのです。

 以来私は自分が診察している患者さんに漢方薬エキス製剤を処方するようになりました。もちろん、今までどおり西洋医学の医薬品も使います。でも漢方薬だけで治せるものもあるのです。

 以前もお話ししましたように鍼灸、漢方薬の他に食養生は大切です。13才までは冷たいものは一年中辞めます。もっとも冷たくても水道水ぐらいまでです。甘いものも天然のは良いですが「白の三悪」は口にしません。白砂糖、白い食卓塩、白米です。喘息は呼吸器だけの問題でなく全身的に治療するのです。

【ア】前回書きました葛粉の利用は普段より病弱な人に使いますが、これは風邪の初期だけに良いのでなく、解熱、鎮痙作用だけでなく脳の血流を良くしたり、発汗作用もあるのです。

【イ】風邪の繰り返しで次第に喘息のような症状に変化してゆきます。民間療法として有名なのは南天の果実を応用する方法です。果実には白いものと赤いものがありますが両方とも同じように使えます。南天はその昔、魔除けになると信じられていたので各家の庭に一本はあるといわれていました。喘息には南天の実7~10gを500mLの水で煎じるのですが、黒豆を同量混ぜて煎じることもあります。半量ほどになったら、茶こしで濾してこれを一日分とします。飲みやすいようにハチミツを加えて飲む場合もあります。